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コロナウイルス関連英語表現集(19)- 医療崩壊・続2021.01.26


 「医療逼迫」「医療崩壊」の英語表現に関しては、昨年、扱いましたが、また最近「医療崩壊」が叫ばれていますので、表現を追加したいと思います。

 日本の医師などに「(日本よりずっと感染者の多い)欧米では医療崩壊は起きていない」という人たちがいますが、起きています。(日本語でも一部報道されているので、「日本語オンリーの世界に生きているから」という理由だけでもなさそう。)

 感染者が少ないにもかかわらず医療逼迫が起こっている日本の医療の構造問題については、すでに語られているので、ここでは置いておいて、違いとして挙げられるのは、日本ほど「崩壊、崩壊」と騒がない点でしょうか。(アメリカは、昨年後半以降、コロナより大統領選に大騒ぎしている。)

 たとえば、昨夏、経済再開後、米南部で感染が拡大し、陽性率が30%まで達している地域もありましたが、陽性率17%ほどの地域でICU病床数の使用率が75~80%になった際(今は、さらに高い)、郡の健康医療の長がテレビやネットで「医療が逼迫しています。自粛してください、マスクしてください」と懇願しながらも、毎回、最後には「でも、まだ大丈夫(We’re still ok)」と言っていたのには笑いました。

 今では、米北部やカナダでは、陽性率が40%を超えている地域もありますが、大都市でも陽性率10%以下の日本の方が大騒ぎしているような… 日本は、病床使用率が今よりずっと低い昨春の時点で、すでに「医療崩壊」と騒いでいましたからね。*

 メディアが視聴率・販売数獲得のために大衆の恐怖心を煽る、というのは、どこの国でも同じです。「崩壊」という言葉を使っていないから煽っていないというわけではなく、使う表現が違います。そこで、今回は、英語圏のメディアが、どのような煽動的(sensational)な表現を使っているかを紹介しましょう。

Catastrophe/Catastrophic


 アメリカでは、今、南カリフォルニアの医療状況が、昨春のニューヨークのような感じになってきていますが、その描写によく使われるのが”catastrophe/catastrophic”です。日本語にすれば「壊滅(的)」となり、自然災害などには使われますが、医療については使われない表現ですね。

L.A. was vulnerable to this COVID catastrophe.
(ロサンジェルスは、このコロナウイルス大惨事にもろかった。)

The catastrophic second wave is overwhelming area hospitals.
(壊滅的な第二波が、地域の病院を圧迫している。)

Seniors are being killed off at a catastrophic rate.
(高齢者が次々に、壊滅的な割合で死んでいっている。)

The impact on healthcare for the whole country could be catastrophic.
(全国的に医療に対する影響は壊滅的になり得る。)

 なお、今月、世界保健機関(WHO)の事務局長がワクチンの分配が富裕国に集中していることに対し、下記のように発言しましたが、「破滅的」という和訳は、日本語ではしっくりこないですね。

The world is on the brink of “catastrophic moral failure.” (世界は、”破滅的なモラル崩壊”寸前だ。)

Apocalypse/Apocalyptic


 英語メディアでは、”catastrophe”以上に刺激的な表現、”apocalyptse”も使われます。”Apocalypse” とは、「この世の終わり」を預言する黙示録ですが、キリスト教・ユダヤ教に由来するものなので、そうでない日本人には、そのインパクトは伝わらないかもしれません。「崩壊」よりも衝撃的で暗然たる表現です。

 キリスト教信者には、「コロナでこの世は終わる」という意味で”apocalypse”を本来の意味で使っている人もいますが、メディアでは「世紀末的な大惨事」という意味で使われます。

比喩的な表現なので、下記のように””(quotation marks)でくくって使われる場合もあります。

The U.S. could be facing an “apocalypse” by next month. 
(アメリカは来月までに世紀末に扮しているかもしれない。)

The doctor described an“apocalyptic” scene inside the hospital.
(その医師は、病院内の世紀末的様子[地獄絵図]を語った。)

There are fears of "apocalyptic" surges in major cities. 
(主要都市では、世紀末的な感染者急増の恐れがある。)

  また、感染そのものではなく、コロナ禍に関しても下記のような使われ方をします。

The pandemic is an apocalypse for restaurants.
(このパンデミックは、レストランにとって、この世の終わりだ。)

How to survive the retail Covid apocalypse.
(コロナによる小売業の世紀末をどのように生き残るべきか。)

 その他、下記のような刺激的な表現も使われています。

An explosion of COVID-19 patients has begun to flood hospitals.
(爆発的に急増するコロナ患者が、病院に押し寄せ始めている。)

The mutated Coronavirus is a ticking time bomb.
(変異したコロナウイルスは、いつ爆発するかしれない時限爆弾だ。)





* 日本では、政府に緊急事態宣言を出させるためにメディアを使って利益団体(interest group)が煽っているとしか思えない。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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