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コロナウイルス関連英語表現集(34) - ワクチン忌避・反対2021.10.19


 日本のワクチン接種率は、アメリカだけでなくイギリスやドイツも抜き、日本ではワクチン接種に対する抵抗はあまり見られないのですが、国によっては、反対勢力が強いところもあるので、その関係の表現も説明しておきたいと思います。
  接種開始が早かったにもかかわらず接種完了者が接種対象者の56%と伸びが低迷しているアメリカでは、ワクチン接種率を上げたい政府(や主流派メディア)と、反対派の間で、今も壮絶なバトルが展開されています。
 デルタが蔓延し出してから(コロナ死者数は9月に一日2000人超)、社員が出社するにはワクチン接種を義務付ける企業が相次ぎました。ワクチン接種をしなければ解雇という医療機関や航空会社も続出し、そうした雇用主を社員が提訴しています。 

 連邦政府職員や請負業者の社員も、12月よりワクチン接種の義務付けが始まります。それに先立ち、ロサンジェルス市では、10月初旬までに市職員に対しワクチン接種を義務付けましたが、何百人もの消防士が市を提訴する準備をしています。同市では、11月より、飲食店やジムを利用するにはワクチン接種が義務付けられます。

ワクチン反対派


 アメリカでは、選択の自由(freedom of choice)などを理由に「ワクチンを接種するくらいなら解雇されても結構」という人たちもおり、英語では、こうした「ワクチン反対派」は”anti-vaxxers”と呼ばれます。”Vax”とは”vaccine”の略語ですが、”anti-vaxxer”(または”anti-vax”)は名詞だけでなく、形容詞としても使われます。* なお、これらの表現は、コロナのワクチンに限らず、あらゆるワクチンに対して使われます。

Eric Clapton is a vocal anti-vaxxer and has released an anti-vax(er) song.
(エリック・クラプトンは、ワクチン反対を主張しており、反ワクチン曲もリリースしている。)

Some anti-vaxxers are against all vaccines while others are skeptical of certain vaccines.
(ワクチン反対派には、あらゆるワクチンに反対する人もいれば、一部のワクチンに懐疑的な人もいる。)

Anti-vaxxers are protesting in many countries.
(多くの国で、反ワクチン派は抗議活動を行っている。)

 イメージ的には、”anti-vaxxers”というのは、信念などに基づいて強行にワクチン接種に反対する人という感じなのですが、(ワクチン推進派の)米主流メディアは、副反応が心配な人などもひっくるめて”anti-vaxxers”のレッテルを貼っています。かつ”anti-vaxxers”は「科学を信じない低学歴の低所得者」という報道の仕方です。(ちなみに、私が知っているワクチン反対派のアメリカ人は皆、大卒で、低所得でもありません。一人は陰謀論者ですが。)

ワクチン忌避・慎重


 日本でワクチン接種を拒否する人は、強固なワクチン反対派というより、新種のワクチンのため安全性を心配する人が多く、日本で使われている「ワクチン慎重派」という表現の方がふさわしいように思います。ワクチンに対する慎重な姿勢、ためらいには、”hesitancy”が使えます。**
 なお、”vaccine hesitancy”の和訳には「ワクチン忌避」が使われていますが、「忌避」は「嫌って避ける」という意味なので、「ためらい」より強い感じがします。  WHO(世界健康機関)では”vaccine hesitancy”を下記のように定義しており、「忌避」「反対」「慎重・ためらい」などすべて含まれるようです。

The WHO defines vaccine hesitancy as delay  in  acceptance  or  refusal  of  vaccines  despite availability  of  vaccine  services.
(WHOでは「ワクチン忌避」を、ワクチン接種を受けられる環境にもかかわらず、すぐに受けなかったり、拒否することと定義している。)

Vaccine hesitancy is high among minorities in the US.
(アメリカでは、ワクチン忌避は、マイノリティの間で高い。)

YouTube has been aggressively deleting videos that even suggest vaccine hesitancy.
(YouTubeは、ワクチン忌避を示唆するだけの動画でも、盛んに削除を続けている。)

 下記のように、形容詞の”hesitant”を使うこともできます。

Vaccine-hesitant people have legitimate concerns.
(ワクチン慎重派の懸念は、まっとうなものだ。)

Many American employers are forcing vaccine-hesitant employees to get vaccinated.
(多くのアメリカの雇用主が、ワクチンをためらう従業員にワクチン接種を受けるよう強要している。)

I’m hesitant to get vaccinated.
(私は、ワクチン接種をためらっている。)



* “Vax”は、”fully vaxxed (= fully vaccinated)”や”unvaxxed (= unvaccinated)”という形でも使われる。

** 実際には、アメリカでも、非接種者には、信条よりも、(短期だけでなく長期的な)ワクチンの副反応が心配なためにワクチン接種をためらう人の方が多い。アメリカでは、とくにマイノリティの間でのワクチン接種率が低いが、それは1930年代から30年間、黒人男性に対して行われた梅毒人体実験などもあり、政府に対する不信が一因。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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