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タカシの外資系物語

部下をほめる !2002.08.23

外資系企業に入って気づいたことの 1 つに、「ほめられる機会が多くなった」ということが上げられます。別に取り立ててすごいことをしたわけでもないのに、上司から「タカシ、すごいな。頑張ってるな ! 」とよく言われます。日系企業にいた頃には、上司からほめられるようなことは、全くと言っていいほどありませんでした。これは一体、どういうわけなのでしょうか ?


そもそも欧米には、「人をほめながら育てる」という文化があるように思います。 1 つの例として、私の友人 A のケース。彼は日本人なのですが、横浜のアメリカンスクールに通っていました。小学生の頃のある日、彼の先生はこんな算数の問題を出しました。


「ここにリンゴが 1 個あります。 5 人で分けるにはどうすればいいでしょうか ? 」


分数の問題ですから、 5 等分つまり 1/5 ずつに切る、というのが答えでしょう。しかし彼は次のように答えました。


「 5 人全員が 1 個ずつ食べられるように、スーパーで 4 個買ってくればいいじゃん」


すると先生はその解答( ? )に「ハナマル」をくれたそうです。「 A くんの発想はすばらしいわね。みんな A くんを見習って頑張りましょうね !」


これが日本の学校ならどうでしょうか。多分、「ふざけるな ! バツ」というのがオチでしょう。しかし、欧米では A くんのような独創的な答えにこそ評価を与えるのです。


私はこれこそが外資系企業の強さだと思っています。ビジネスの世界では、「解答」はありません。結果として、成果を上げたものだけが正しいのです。そのような中で、社員全員が「リンゴ 5 等分」という答えしか持っていなかったら、どうなるでしょう。やっていることは何となく正しいのでしょうが、顧客にとってみれば面白くも何ともない社員、会社に映ってしまうことでしょう。


日本のサラリーマンの発想が面白くないのは、面白い発想を打ち消すような教育がなされてきたからです。「 5 人で分けるには 5 等分するしかない」という画一的な考えが、人が元来持っている斬新な発想を打ち消しているのです。欧米企業の「ほめる」部下指導なら、既存の画一的な固定観念を打ち破ってくれるかもしれません。


もちろん、とりあえずの「正解」、つまり「常識」も重要です。 A くんのリンゴのような発想ばかりでは、ビジネス社会を生き抜いていくことはできません。「ふつうに考えれば、 1 個のリンゴを 5 等分すればいい。だけど、追加で 4 個買ってくれば全員が 1 個ずつ食べられる。この場合は、追加のオカネ ( 投資 ) が必要。また、リンゴが好きでない人がいるなら、今回は我慢してもらって、リンゴの好きな人だけで分ければ分け前が増える。次回ミカンを等分するときに、リンゴを我慢した人に優先的にあげればいい。次回もリンゴかもしれないというリスクはあるが ……」などなど、「常識」をベースに答えのバリエーションを出していくことによって、それぞれの「良い点・悪い点 ( Pros & Cons ) 」を抽出することができます。


さて、私の部下であるツヨシくんが、プロジェクトの報告にやってきました。ここは 1 つ、彼を「ほめる」ことによって、よりよい答えを導いていきたいと思います。


ツヨシ 「タカシさん、○○商事の案件ですが、一応私としては B 案を提案しておきましたから ……」


私 「( ん ? B 案って、オカネもコストも一番かかるから、クライアントにとっては最悪の案だったのでは ? …… どうして選んだのか、ちょっと聞いてみよう …… ) お疲れ様、ツヨシ …… いつもながら、ありがとうね。ホントに助かるよ。で、どうして B 案にしたの ?」


ツヨシ 「だって、他の案って、面倒くさいじゃないですか。ぼく、面倒なの嫌なんすよね ……」


私 「(にゃんだとー …… 面倒がるなんて 10 年早いわー ! ) いや、ツヨシの提案については、それはそれなりにいいと思うんだけど、ね。いや、どんな基準で B 案を選んだのかな、って思ってね ……」


ツヨシ 「だ~か~らぁ~。うちにとって一番楽なのを選んだって言ってるじゃないっすか !」


私 「ブチッ ! ( 切れた音 ) な、なんだと、てめえ。もう一度言ってみろコノヤロー。お客様あっての商売なんだぞ、おれたちは ! それを何だ、さっきから聞いてりゃ …… そ んなに楽したいなら、家で遊んでろ、てめえなんかクビだ、クビ !」


…… いやぁー、部下をほめるってのは、ホントに難しいっすね、はっはっは …… って笑ってる場合かっての、トホホ ……

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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