Global Career Guide
元・外資系人事本部長、10,000人を面接したグローバル・キャリア・カウンセラーの鈴木美加子です。本日のテーマは、“社会人生活は長い、転職回数には気をつけよう”です。
日本の労働市場も流動性が高くなり、転職を問題視する風潮がなくなったことは喜ばしいことです。しかし、何度も転職している人を高く評価するかと聞かれれば、やはり否と答えざるをえません。外資系にはJob Hopperという、転職回数が多い人のことを指す単語があります。では、転職回数が多いとは具体的にはどういうことでしょうか?
この場合、2つの可能性が考えられます。まずは30歳前後で、不運が続いたのか1年半くらいでの転職を4回繰り返してしまったというケース。次に、社会人歴を3年で割ったら、答え(転職回数)が6回を超えているケースです。
転職できるかどうかを考えれば、35歳くらいまでは短い期間で転職を繰り返しても次の職場を見つけられます。また、高度なスキルを持つエンジニアのような人材は、それこそ「包丁1本さらしに巻いて」風に、50歳位までは簡単に転職をすることができると思います。日本ではまだ年齢差別が著しく、50歳位で能力・体力・気力が落ちると誤解されているため、50歳を超えた位からは転職することが厳しくなります。
つまり、あまり転職回数を増やすのは、キャリアの後半戦を考えると得策ではないということです。転職する前に、「なぜ今転職をしたいのか?」をよく振り返ることをおすすめします。最も理想的な状態は、今現在の職場ポジションで学ぶことがなくなり、会社に対して貢献することもなくなった状態、いわば卒業したと胸を張って言えるような状態です。「現職を卒業したとはまだ言い切れないなぁ」と思うときには、人間関係の煩わしさや周囲のノイズや他人と比較することをやめて、目の前の仕事に集中し、自分のスキルと経験値を上げることを考えましょう。努力を続けるうちに、社内での抜擢や異動、またはレベルアップした自分にふさわしい外部への転職が待っていますので、焦らないでください。
厚生労働省による「平成30年雇用動向調査の概況」より、転職の理由として多くあげられる3つを紹介します。
年収をアップさせたいので転職を考えるというのはよくあることです。どのくらい上昇を見込めるかは時代に大きく影響され、残念ながらここのところかつての10-15%アップが当たり前の状況は望めない状態です。同じ職種で年収アップの転職を狙うのであれば、1ランクアップして当然と英文レジュメ(履歴書)に書けるようにしたいです。例えば、技術職であればスキルを向上させるのがわかりやすいです。管理職になりたいのであれば、正式な部下がいなくても新卒社員の面倒を見たことや、部署をまたぐプロジェクトのメンバーに自分から名乗りを上げて人の面倒を見たことがあるとレジュメに書けるようにするのです。
全く違う分野に方向性を変える転職の場合、即戦力を重んじる外資では年収が今より下がることは起こりえますので、その時はやってみたいことに挑戦できることに価値を見出してください。
働き方改革の導入で少しずつ改善されているとは言いながら、まだまだ残業が多いのが日本の現状です。企業の文化として長時間労働をよしとする場合もありますし、上司がオフィスに長くいて、部下が帰りづらいという場合もあるでしょう。
休日については、日数が少ないという問題もありますが、業種によっては社員が有休を取得できる月や一回に取れる総日数が暗黙の了解で決まっている場合もあり、そうとは知らずに海外旅行が趣味の人が入社してしまって困るような極端なこともあります。
いずれにしても、ワーク・ライフ・バランスを理由に転職したい場合は、レジュメには書かず、2次面接の時に質問をする形で現状を聞き出した方がいいです。企業は、お金・労働時間のことが最優先される候補者をあまりよく思わない傾向にあるからです。本当に自分に自信があって実力もある候補者は、お金や待遇は後から付いてくるとわかっているので、細かいことは言わないのが通例です。
キャリア相談でよく出てくる転職動機です。もちろん、メンタルのバランスを崩しそうなほど追い込まれている時は現職をなるべく早く離れた方が良いのですが、そうでない場合は3つのことを考えてください。
a) 外資系の場合、自分も転職しますが相手が転職する可能性もあるのが良いところです。相手が1年以内に移る可能性はありそうでしょうか。ありそうなら踏みとどまる方が得策そうです。
b) 相性が悪い人間関係というのは、どの職場にも存在します。今のあなたの悩みは、次の職場でも発生しそうでしょうか? YESなら、「逃げの転職」をしても次の勤務先で似たようなことが発生する可能性があり、それこそJob Hopperになってしまいますので良く見極めましょう。
c) 大企業の場合、社内で異動することも可能です。うまくいっていない相手が現上司の場合、異動にあたり嫌がらせされたりするかもしれませんが、そこは割り切って、現職を離れるという目的を果たしてください。
本日のテーマは、「社会人生活は長い、(後半のことも考えて)転職回数には気をつけよう」でした。会社の立場に立てば、人材の採用にはお金・時間・労力がかかるので、過去の職歴からすぐ辞めるだろうと想像できる候補者と、1回しか転職経験がない候補者が並んだら、どちらを採るかは明白です。それぞれに事情はありますが、採用する企業の目線も意識してみてください。
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グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役
日本GEの人事でキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレー、イートンのアジア・パシフィック本部などを経て、日本DHLの人事本部長に就任。1万人を面接した自身の転職経験と英語や異文化と格闘した体験を元に、外資への転職を希望する方・外資でキャリア・アップしたい方を全力でサポート。
英検1級、TOEIC960点。iU情報経営イノベーション大学・客員教授。ルミナスパーク・リーダー認定講師、STAR面接技法・認定講師、ホフステード異文化モデル公認講師
NY生まれでオーストラリア居住経験あり。映画とコーヒーが大好き。
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「英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業出版社)
強みを活かし個の力を最大限に発揮できるグローバル人材を、一人でも増やすことで母国の発展に寄与することをミッションとする。 企業向けには異文化理解・海外赴任前研修を、個人向けには外資への転職サポートを提供。